「塩」は生きていくうえで貴重な存在
人間は海から生まれたといわれているのを知っていますか?
その生命が進化し、陸に上がることができたのは、体内に海水を抱えることができたからといわれています。赤ちゃんが育つ羊水は、ほぼ海水と同じ組成で、人間の体内には、約0.9%の濃さで塩分が含まれています。体重60kgの標準体型の成人男性なら、約306gもの塩が体内に溶け込んでいます。
体内に溶け込んだ塩は、新陳代謝の基礎機能を担ったり、筋肉や骨、血液などを構成したりするなど、生命活動に重要な役割を果たしています。
そのため、大量の発汗や極度の減塩などで体内の塩分濃度が薄くなり過ぎると、体が生命の危機を感じて血液を上げるホルモンが分泌されたり、肌荒れや倦怠感、目覚めが悪い、無気力、痙攣、嘔吐などの症状が起こったりと身体に不調が感じられ、最悪の場合には死に至ることもあります。
海は生命の母、塩は生命の源です
適切な量の塩を摂取することは、人間にとってとても重要なことなのです。
塩はどれくらい摂っていいの?
※日本高血圧学会では1日6g未満、WHO(世界保険機関)では1日5g未満としています。
「減塩=健康」は間違っている
ある程度の年齢になると食生活の見直しをする人が増えてきます。また、高血圧=塩分の過剰摂取と関連づけるひとも多く、最初に取り組むことのひとつに減塩があります。
塩を控えすぎるとミネラル不足になる
塩はミネラルの塊です。ミネラルが酵素をしっかり働かせてくれることで細胞が元気になるので「塩を摂ると免疫力が上がる」ともいわれています。結果として、代謝がよくなり血流もサラサラになることで、臓器が正しく動いてくれます。
また、塩には熱を発生させる働きがあるので、質の良い塩が摂れている人は体温が上がりやすくなります。健康のために『塩を減らす』のではなく、健康のために『質の良い塩を適度に摂る』ことをおすすめします。
体温が1℃上がると最大5倍~6倍も免疫力が上がりますが、逆に1℃下がると免疫力が30%下がるといわれており、代謝が約12%低下するといわれます。
塩は大きく分けて「精製塩」と「天然塩(自然塩)」の2種類がある
ひと口に「塩」と言っても、世界中にはさまざまな種類の塩があります。海水を煮詰めてできる結晶がいわゆる「塩」で、この塩をサラサラになるまで乾燥させて、食用としたものを「食塩」と呼び、大きくは「精製塩」と、いわゆる「自然塩(天然塩)」とに分けられます。
精製塩はミネラルバランスが崩れた塩です
スーパーやコンビニで見かけることが多い塩です。原材料は海水ですが、ミネラルを取り除き機械を使って結晶化するため、精製塩と呼ばれます。ミネラルを含まず塩化ナトリウムのみなので、栄養価は他の塩と比べると一番低く、安い値段で売られているのも特徴です。
天然塩(自然塩)はミネラルを補う、身体の組成に近い塩です
海水を原料にし、太陽や風などの自然の力を利用して海水を蒸発させ、釜で煮詰めて結晶化させた塩です。精製塩と異なり、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、ヨウ素などの微量ミネラルバランスが既に整っています。
【精製塩】
さらさらしている。味は雑味がなく塩辛く感じやすい。
【天然塩(自然塩)】
粒子がバラバラだったり、しっとりしている。多くは、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムなどのミネラル分を含むため、塩味の中にほんのり甘味も感じられる。
質の良い天然塩(自然塩)を選びましょう
自然の力でゆっくりつくりあげる天日塩は、熱を加える釜炊き塩よりも海水のミネラルが壊れにくいので、健康志向の高い方に人気です。
※ただし、天日塩という名称はあくまで「製法」で「原料が天然」というわけではない為、表示をよく確認する必要があります。
塩の豆知識
塩の色は無色透明です
塩の結晶は立方体、つまりサイコロ形をしています。塩の結晶はでき方によって、いろいろな形になりますが、どれもこの立方体が組み合わさってできたものです。
一般的に「塩の色は白」というイメージがありますが、実は無色透明で、白く見えるのは光の乱反射によるものといわれています。ピンクや褐色、グレーなどの色をした塩もありますが、それらは塩が採れたときなどに含まれる有機物や鉄分などによるものといわれています。
例えば、ヒマラヤの岩塩のようなピンクの塩には「鉄分」が、黒い塩は「活性炭」が含まれています。また、ヒマラヤの岩塩のなかにも赤黒い色のものがあります。褐色の塩は「海藻」などの影響によるものです。
塩には賞味期限がありません
塩には明確な賞味期限が定められていません。これは塩の経年劣化が極めて少ないためです。塩のように塩分濃度が高い物質に細菌がつくと、塩は細菌の細胞から水分を奪います。水分を失った細菌は生きることができなくなり死滅するので、塩は腐らないとされているのです。開封後も保存状態が良好であれば、無期限に使用できるといわれています。
【賞味期限】
食品の劣化が比較的遅いものに表示される。おいしく食べられる期限なので、過ぎてしまってもすぐに食べられなくなるわけではない。例:缶詰、カップ麺、スナック菓子など
【消費期限】
食品の劣化が早いものに表示される。安全に食べられる期限なので、過ぎてしまったら捨ててしまった方が良しとされる。例:惣菜、ケーキ、生の肉など
※ただしハーブ塩やごま塩などのブレンドされた塩はブレンドした素材に賞味期限があるので賞味期限表示の記載があります。
「ミネラルたっぷり」は注意が必要です
最近では、輸入塩などに、にがり(苦汁)を添加した塩が「ミネラルたっぷり」といった表記があるものが販売されています。にがりとは、海水を煮詰めて塩を取り出したあとに残った液体のことを言い、マグネシウムが主成分となっており、文字通り舐めると苦味が強いものです。
このようなにがりを添加して付加価値を高めた塩は、日本に特有の商品です。にがり入りの塩は、日本ではなんとなく健康的なイメージがありますが、ミネラルを補給する手段としては、分量的にあてにできないので注意が必要です。
塩選びのポイントとは
そのほかにも塩は、身体が酸性になるのを防いだり、消化と吸収を助けるなど、様々な働きをしています。塩は健康のマルチプレイヤーともいえます。
「質の良い塩」を見つけるためのチェックポイントとは
塩公正マークがある
塩公正マークは食用塩公正取引協議会に表示が適正と認められた場合に表示されます。
安全なお塩選びの目印です。
原材料名に添加物が含まれていない
原材料は「海水」だけのものがほとんどですが、固形防止剤などが含まれていることがあります。
できるだけ、添加物が含まれていないものを選びましょう。
工程が「天日」や「平窯」
「天日」「平窯」は天日や火の力で塩を採り出す伝統的な方法です。
塩には原材料名の他に、工程が記載されているため、購入の際はぜひ一度手に取って確認するのことをおすすめします。
多すぎず少なすぎず、良い塩を選んで健康な日々を送りましょう!